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「……ほんっとにもう、わたしの目の前で二人でイチャイチャするの、いいかげんにしてよね?」
麗華さんは心底うんざりしているようだ。
「じゃあ、おジャマ虫はそろそろ退散するわ。
ねぇ……わたしがしばらく泊まれる部屋ってどこ?」
「おい、『しばらく』っていつまでここにいるつもりなんだ?
うちだって、見つかるのは時間の問題かもしれないぞ?
それに、おまえだって子どもじゃなくいい大人なんだから、見合いがイヤで飛び出してきたって、結局は戻らなければいけないことはわかっているんだろう?」
万里小路氏はあくまで「正論」を言い放つ。
——ここに匿う気なんて、まったくないんだ。
家のために人生を捧げられそうになっている彼女が、行くあてもなく彷徨っているのを想像すると……なんだか、かわいそうになってきた。
「あ、あの……とりあえず、おうちに見つかるまでは、ここにいてもらってもいいんじゃないですか?」
あたしはおずおずと申し出た。
考えてみれば、この部屋の所有権の半分はあたしになるのだ。
きっとこんなふうに言える「権利」が、あたしにはあるはず……
「えっ、ほんとにいいの?」
麗華さんの顔がぱぁーっと明るくなる。
反対に、万里小路氏の表情はさーっと険しくなる。
「だって……お気の毒じゃないですか……」
あたしが両眉を下げて万里小路氏を見上げると、彼がふーっと息を吐いた。
「……美々がそこまで言うのなら、仕方ないな。ホレた弱みだ」
——いや、だから、そういう「演技」は大丈夫です。もう、お腹いっぱいですっ!
それに、麗華さんだって、あたしたちの関係を微塵も疑ってないと思いますよ?
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