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「……どうする?」
万里小路氏は、突然「中谷さん」の顔になった。
しかも、今まで見た中でも一二を争う、超絶にやさしい顔だ。
「幸いなことに、キングサイズのベッドだ。
星◯リゾートでも使っている日◯ベッドのマットレスだから、寝心地は快適だよ」
——ず、ずるい……ずるすぎる……
「えっと……じゃあ、あたし……か、帰り……」
なんとか搾り出した言葉を「ます」まで言い切らないうちに、
「残念だなぁ。せっかく麗華は、おれたちが本物の婚約者だと信じ切ってるっていうのに」
バッサリと、遮られてしまった。
「きみがいきなり帰ってしまったら、麗華はたぶん怪しむんじゃないのかな?
もしかしたら、もう信じなくなってしまうかもしれない。
それでも、あいつがおとなしく黙っててくれればいいんだけどね。
もし、周囲にしゃべったりなんかしたら……
あれだけ盛大に婚約パーティをした手前、万里小路家の末代までの恥になるね」
——うっ、ずるい……ずるすぎる……
「え、えっと……そしたら、今夜だけは万里小路さんの寝室にお世話になります」
これ以外の答えがあるのなら、だれか教えてほしい。
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