Last Chapter

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万里小路氏があたしの腕を取って、自分の方に引き寄せる。 二人の距離がぐんと近くなり、彼にふんわり抱きしめられ、そして耳元で囁かれる。 「きみがそんなに不安なら…… この場で婚姻届に署名してほしい」 その声が、なんとなく不安げなのは…… 「そして、明日の朝、きみの戸籍のある役所へ行って提出しよう。おれの戸籍はすでに用意してあることは言っただろ?」 ——あたしの気のせいかな? 「あの……直仁さん」 あたしは初めて、今夜婚約者になった(ひと)の名を呼んだ。 一瞬、彼がぴくり、と弾かれたように反応した。 そして、万里小路氏を見上げて告げる。
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