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ーーーーお前なんて生まれてこなければよかったのに
これは母の口癖だった。
母は19歳という若さであたしを身ごもった。その事実を知った父はすぐに母の前から姿を消したらしい。その上、頼れるような親族は母にはいなかった。
それでも母はあたしを女手ひとつで育ててくれた。生活は決して裕福ではなかったけれど、あたしは母といられればそれだけで満足だった。
母があたしを初めて殴ったのは、小学2年生の時。「お前の顔があの人そっくりだッ!」そう叫びながらあたしの顔を思いっきり殴った。
自分ではなく、父親の方に似てしまったことがそんなに悔しかったのだろうか? いや、そうじゃないと思う。
その日から、あたしを育ててくれていた母の手は、あたしを殴るための凶器となった。
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