孤独

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孤独

部屋に一人でいる時、世界が滅んでしまった錯覚に囚われることはないだろうか。 通りから車の音がなくなり、通行人の話し声が聞こえなくなった時、ひょっとしてこの世界には自分しかいないのではないだろうかと恐怖したことはないだろうか。 ―私にはよくある。 一人暮らしを初めて私は弱くなった。家を出るまでは孤独は好きなタチだと思っていたのに、今では独りの夜に怯えて泣きながら眠っている。 世界がなくなってしまった錯覚に陥ると私は、そうでないことを確認するために近所を徘徊する。昼でも夜でも、誰か他に生きている人を見つけるまで歩き続ける。 幸いにもここは住宅街で深夜であっても外に出ればすぐに人に出会えるし、アパートの隣の部屋から鼻歌が聞こえてきて徘徊せずに済むこともある。
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