0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
どれくらい歩き回っただろう。頭の真上にあったはず太陽が、空を赤く染めている。
夕方になっても生存者は見つけられず、夢は覚めなかった。
スマホは電源が着かないし、近隣の店も電気が通っていないようだった。
暗くなる前に家に帰らなきゃ。
絶望した心に急に現実めいた思考が混じる。
まさか本当に一人になってしまうなんて。
あんなに恐れて泣いていた孤独は、実際に訪れてみると実感が湧かず、放心することしかできない。
だってこれは夢だ。きっとそんな妄想をしすぎて、夢にまで見てしまってるんだ。
だけど、赤々とした夕焼けは妙にリアルで、初夏にもかかわらず寒気がした。
死にたくない。
何故かそんなことを思った。これは夢なのに。
目が覚めれば、いつも通りなのに。
最初のコメントを投稿しよう!