私と女の子

1/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

私と女の子

「ねえ。」 「ひゃ!!」 突然後ろから声をかけられて、私は飛び上がった。 「あなた一人?」 小さな女の子だった。 銀の髪に赤の瞳。明らかに日本人離れした顔立ちは、人形を彷彿させる。 「あなた一人なのね?」 女の子の大きな瞳が私を上からのぞき込んでくる。 その真っ直ぐな視線に射貫かれて、はたと違和感に気付いた。 「う、浮いてる??」 女の子は宙に浮いていた。重力なんて何もないみたいにふわふわと。 私より背丈の小さい女の子の、銀の髪が目の前で風になびいている。 「あなたは浮けないのかしら?」 女の子がちょこんと首をかしげた。 「普通浮けないよ。」 何を真面目に応えているのだろうか。 夕焼けが赤から紫に変わっていく。 早く帰宅しなければ。ここにいてはいけない。 「私急いでるの。それじゃあ、さようなら。」 一刻も早く家に帰りたかった。ベッドで眠りにつきたかった。 きっと目が覚めれば、死んでしまっている町も宙に浮く少女もいなくなる。 昨日と同じ明日が来る。 踵を返した私の袖口を女の子はくいっと引いた。宙に浮くのは止めて、地面に立っている。 「お姉ちゃん、独りなんでしょう?私も独りなの。」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加