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私と女の子
「ねえ。」
「ひゃ!!」
突然後ろから声をかけられて、私は飛び上がった。
「あなた一人?」
小さな女の子だった。
銀の髪に赤の瞳。明らかに日本人離れした顔立ちは、人形を彷彿させる。
「あなた一人なのね?」
女の子の大きな瞳が私を上からのぞき込んでくる。
その真っ直ぐな視線に射貫かれて、はたと違和感に気付いた。
「う、浮いてる??」
女の子は宙に浮いていた。重力なんて何もないみたいにふわふわと。
私より背丈の小さい女の子の、銀の髪が目の前で風になびいている。
「あなたは浮けないのかしら?」
女の子がちょこんと首をかしげた。
「普通浮けないよ。」
何を真面目に応えているのだろうか。
夕焼けが赤から紫に変わっていく。
早く帰宅しなければ。ここにいてはいけない。
「私急いでるの。それじゃあ、さようなら。」
一刻も早く家に帰りたかった。ベッドで眠りにつきたかった。
きっと目が覚めれば、死んでしまっている町も宙に浮く少女もいなくなる。
昨日と同じ明日が来る。
踵を返した私の袖口を女の子はくいっと引いた。宙に浮くのは止めて、地面に立っている。
「お姉ちゃん、独りなんでしょう?私も独りなの。」
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