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女の子は当然のようにアパートについて来た。
宙に浮く得体の知れない女の子とは言え、生きている人に出会えて安堵したのも事実で、あどけない笑顔を前にいつの間にか私は彼女に気を許していた。
女の子はソウと名乗った。いや、正確には違うらしいが、私にはソウと聞こえた。
「あなたの言葉にはない音なのかもしれないわ。私はずっとずっと遠くから来たの。」
「そっか。日本語上手だね。」
カップラーメンを作りながら適当に相づちを打つと、彼女はきょとんと首をかしげた。彼女は何故かしばらく黙ったあと、思い出したように耳に手を当てた。
「それは翻訳機が仲介しているからだわ。ここには飛行装置だけじゃなくて、翻訳機もないのね?」
「飛行装置?」
それはさっき宙に浮いていたのは機械のおかげ、と言うことだろうか。
「私たちのところでは誰もが持っている機械だけど、ここは私のところより遅れてるのね。」
だけど、そんな機械聞いた事もない。そんな夢のような技術があれば、かなり話題になると思うのだが。
「ソウはどこの国から来たの?」
「私もどれくらいか分からないぐらい遠くからよ。
―私、捨てられたの。」
そういって彼女は窓越しに星空を見上げた。
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