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かける言葉がやっぱり見つからないまま沈黙が流れる。
「あなたも一人なんでしょう?」
彼女は初めの質問を繰り返した。
「ここは、数百年前に文明が滅びた星よ。あなたがどうしてここにいるのかは知らないけれど、誰かと一緒ってわけではないでしょう?」
彼女の言葉が頭の中で反響する。
私の知らない間に地球が滅びた。そんな話誰が信じられるだろうか。
私は昨日と同じ明日を繰り返して、孤独に怯えながら日々を消化するだけの存在だったはずなのに。
「もしも一人で寂しいのなら、私と一緒に暮らしましょう。」
私以外の人は誰もいないように見えた。
「いつか別の誰かが来て、私たちをどこかへ連れて行ってくれるかもしれない。」
町は廃墟になってしまっていた。
「文明の欠片を拾って、ロケットを作れるかもしれない。」
彼女の言っていることが本当で、世界が滅びてしまったのだとしたら。
人類が、滅んでしまったのだとしたら。
「誰も来なくてもここでの生活が気に入って、もう外に出たいとは思わないかもしれない。二人なら…。」
女の子の話を遮って、私は静かに首を振った。
難しい話じゃない。
人類が滅んで、私だけが生き残った。
―そんなことあるはずがない。
すべてを悟った心は不思議と落ち着いていた。
きっと私はずっと前に死んでしまっている。
だけど怖くないのはきっと最期の瞬間に独りでないから。
「ごめんね。折角見つけてくれたのに、君を独りにしてしまう。」
ソウは泣いていなかった。驚いてもいなかった。きっと初めから気付いていたんだろう。
「だけど、ありがとう。」
自分の死に気が付いてしまった以上、もうここにはいられない。
体が軽くなる。意識が薄くなる。
ソウは静かに微笑んでいた。
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