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三人の支払い
「絶対もっとかかっただろ」
翔が静也に問う。
「いやいや、ほんとに」
「だってこのチーズケーキだけでもかなりの値段するしさ」
凛音が右手のチーズケーキを見ながら言う。
「買ってきてくれた分ちょっと多く見積もってもいいからさ」
と俺も呼び掛けた。一人三百円、合計千二百円。それでコーラと紙コップと高級スイーツセットは流石に割に合わない。
「でも、フェアで結構安くなってて……」
いや、そうは言っても。
「……まぁいいや、三百円払えばいいんだろ、はい」
翔はいつの間にか財布から小銭を取り出していた。
「ちょ、翔くん。静也くん絶対安く言ってるよ」
「でも静也が三百円で、って言うんだから、それでいいんじゃねーの?」
「どうなの? 静也くん」
凛音の言葉に静也は何も返さず、ただ下を向き座っている。
「静也、こんな時に遠慮とかいいから、」
「嶺生、別にほっとけよ」
「ほんとにかかった金額、言ってよ」
「三百円って言ってんだから三百円で……」
「二千四百円」
「は?」
突然声を発した静也を三人で見つめる。
「二千四百円かかった。だから、一人、六百円」
今まで意識していなかった周りの人々の騒ぎ声が、途端に音量を上げて聞こえ始めた。
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