三人の支払い

1/1
前へ
/6ページ
次へ

三人の支払い

「絶対もっとかかっただろ」 翔が静也に問う。 「いやいや、ほんとに」 「だってこのチーズケーキだけでもかなりの値段するしさ」 凛音が右手のチーズケーキを見ながら言う。 「買ってきてくれた分ちょっと多く見積もってもいいからさ」 と俺も呼び掛けた。一人三百円、合計千二百円。それでコーラと紙コップと高級スイーツセットは流石に割に合わない。 「でも、フェアで結構安くなってて……」 いや、そうは言っても。 「……まぁいいや、三百円払えばいいんだろ、はい」   翔はいつの間にか財布から小銭を取り出していた。 「ちょ、翔くん。静也くん絶対安く言ってるよ」 「でも静也が三百円で、って言うんだから、それでいいんじゃねーの?」 「どうなの? 静也くん」 凛音の言葉に静也は何も返さず、ただ下を向き座っている。 「静也、こんな時に遠慮とかいいから、」 「嶺生、別にほっとけよ」 「ほんとにかかった金額、言ってよ」 「三百円って言ってんだから三百円で……」 「二千四百円」 「は?」 突然声を発した静也を三人で見つめる。 「二千四百円かかった。だから、一人、六百円」 今まで意識していなかった周りの人々の騒ぎ声が、途端に音量を上げて聞こえ始めた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加