朝山灰 -暗転-

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朝山灰 -暗転-

 今日は散々な目に遭った。……いや、自分の不注意が原因なのは重々承知している。彼女が悪いわけじゃない。良い人そうじゃなかったか? うん、とは違う。  サボるため……ではなく、資料を整理するために、誰も来ないような広い倉庫に入る。特にこの第3倉庫は、周りからはゴミ屋敷と称されるほど、収納されている資料の種類がバラバラだ。  高く聳える棚と棚の隙間は、人が体育座りをしたら通路が塞がるほど狭い。段ボールを背にして、体重を預ける。 「すぅ……はぁああ…………」  紙と埃の匂いが気道を埋める。思いっきり吐き出すと、自分の重たい物まで出て行くような感覚。体重が1キロくらい減っただろうか。  耳に届く音。いつもは静寂のはずが、壁を打ち付けるシャワーの音がこの場を支配している。  そして、その場は爆音の後に、光を失う。 「……うえ?」  何故そんな展開になる。思わず変な声を出してしまっただろう。  数回瞬きをして、ようやく思考が正常に戻る。恐らく、雷が近くに落ちたのだろう。この部屋は窓も無いため、全く光が届かないのでとても迷惑だ。自分が暗所恐怖症じゃなくて良かった。  とりあえず、光が戻るまで大人しくしているのが賢明か。この部屋は電子ロックのため、停電ともなれば……、……ん?開かないのでは?? 「……もしかして、マズいことになってる?」  声に出すほどすっとぼけた状態で、俺はスマホの懐中電灯機能を頼って入り口に向かった。
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