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栗木梓 -暗転-
結局会議は持ち越しになってしまい、私は資料を集めることにした。みんながゴミ屋敷と称する、第3倉庫で。
何故ゴミ屋敷などと不本意な名前が付いているのか、その答えは簡単。種類ごとにまとめられておらず、取りたい資料がどこにあるのか、誰もわからないからだ。
だから、ここにはもう滅多に使わないであろう資料だけが置かれているのだが、中には掘り出し物があったりもする。今回も何かないか……と、少し探ってみることにした。
……何ていうのは建前で、本当はここの空間にいるのが好きなだけだ。誰もいない、自分だけの世界のような気がして、とても落ち着く。
神経をすり減らさなくて良いこの空間は、私の癒しだ。
……そのはずだったのに、思わぬ音が2つ。ピピッ、ガチャッ。電子音とロック解除の音。そして、部屋に響く靴音。
……誰か、来た。
別にやましいことはしていないのに、不意打ちで心臓が太鼓に早変わりする。けど、資料を置きに来ただけの人かもしれない。しばらく待てば……
「すぅ……はぁああ…………」
……すごいため息。大丈夫だろうか、この人。……もしかして、私のように休憩に来たのでは? そんな可能性すら頭を過ぎる。
耳に聞こえるのは、空気の音すらかき消す雨音。今日は嵐だ。出来れば、帰りまでに止んで欲しい。でなければ、靴と靴下が悲惨なことになるのが目に見えて……
「っ!」
「……うえ?」
思わず声を上げそうになって、ぐっと堪えた。向こうの人は低い声で驚きを表していたけれど。
どうやら、雷による停電みたい。……最悪だ。ここは電子ロックの倉庫なので、電気が来なければ恐らく開かない。窓も無いので、真っ暗で何も見えない。
完全に、八方塞がりだった。
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