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-邂逅-
とりあえず、スマホの明かりを頼りに出入り口の前に突っ立ってみる。……社員証をいくらタッチしても、「なにそれおいしいの?」と言わんばかりに無視している。
当然か……と思って、何か復旧までに出来ることを探すことにした。ぐるっと辺りを見回して、後ろを振り返ると……何と女性がいた。
「……え?」
「っ……!」
何故こんな場所に? まず出てきた疑問はそれだった。
さっきまで人の気配はなかったはず。しかもこんな場所に来る物好きなんて、俺くらいしかいないと思っていたのに、こりゃ一体どういうことだ。夢か、幽霊か。
「……ぁ、あの、えっと……」
悲報、現実のようだ。顔を照らすのは失礼なように感じた俺の手が、勝手に胴体しか光を当てようとしない。だから、どんな人かはわからない。
けど、さっきチラッと見えた長髪は、恐らく8割5分くらいの確率で女性だろう。うーん、こういうときどうすれば??
「……ダ、ダイジョウブデスカ?」
緊張しか伝わらない発声、反吐が出る。しょうがないだろう、しばらく女性との会話なんて避けてきたのだから。うん、これは不可抗力だ。
「は、はい……。えっと、やっぱり、開かない……ですか?」
「え? え、あ、はい、ソウデスネ」
ダメだダメだ。ロボットか何かに生まれ変わったのか? 俺は。上手いこと喋れなくて、呼吸が乱れる。いえ、決して変態では無いんです。お願いだから勘違いしないで。
「あ、あの、ひ、じょうでんげ、あって」
「え? 何て?」
「えっと、そこに……」
「っ!?」
距離が縮まり、咄嗟に後退る。しかし、踵の部分が床と密着して滑らず、体重移動を拒んだことで思い切り尻餅をついた。
「いっ……!!」
「だ、大丈夫ですか……!?」
駆け寄ってきてくれた、その人はとても親切な人なのだろう。みっともない俺が相手なのが、可哀想なほどに。
「……こ、来ないでくれ!!!」
「っ……?」
ああ、本当に俺は、最低だ。
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