朝山灰 -朝-

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朝山灰 -朝-

 目が覚める。  寝ぼけた身体を暖める、タオルケットに包まれている感覚は1番好きだ。それを手繰り寄せ、少し空いていた胸元を埋める。気持ち良くて、もう1度瞼を閉じてしまおうかという気になる。  誰もいないこの空間が、好きだ。  だが、いつまでも駄々をこねてもいられない。平日では、小学生でも許されない行為だろう。その証拠に枕元では、スマホが音と振動での呼び出しを再開した。 「……起きるか」  ボソッと呟いた声は、あまり好きじゃない。低すぎて、大体初対面の人には怖がられる。当然だ、俺も怖い。前に寝言で起きたときは、殺人鬼が側にいるのかと勘違いしたほどだ。  朝ごはんは、昨日のうちに買っておいた惣菜パン。あまり売れていないらしく、帰りがけに行けばいつも割引になっている焼きそばパン。  だが、何を隠そう俺は、この焼きそばパンの大ファンだ。  冷めても美味しいし、温めても美味しいなど、完璧過ぎないか? 何故いつも売れ残る。いや、売れ残っていてくれなくては困るのだが。  誰も気づくな。いや、気づいてもらわないといつか店の棚から無くなってしまう……。それは是が非でも避けてもらいたい。  そんな葛藤も一緒に胃に押し込み、牛乳を飲んで歯を磨く。髭を剃るという、1番怠い作業は後回しにした。  ……はぁ、誰にも会いたくない。
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