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そしてしばらく、僕は結局しっくりこないながらも検索ワードを「親友の弁当 今日」にすることにした。
他人の弁当なら自分の家のおかずを調べるより信憑性がある気がする。
入力してEnterキーを叩くと昨日と同じように出て来た答え。それは……。
「今日のあなたの親友の昼ご飯はカップラーメンです」
「は?」僕はだらしなく口を開けた。それというのも全くあり得ない回答だったからだ。僕が昼飯を共にする親友は真面目なタイプで、弁当も毎日親の手作り。たまにコンビニ弁当を持ってきているところすら見たことが無い。
間違っても高校の昼休みに目立とうとしてカップラーメンを食べるなんてことをするタイプじゃない。
「はあ……」
あほらしい。期待して損したみたいだ。手の込んだイタズラか。どこかで俺が検索したワードに適当に返答している奴がいたりするらしいな。
逆に言えばこれが本当であれば確実にこのパソコンは真だ。でも、ありえない。そうなったら100回土下座してやる。僕は黒いパソコンを軽く殴ってそのまま家を出た。時間を取られて遅れそうなことにも腹が立っていた。
そしてその日の昼休み――。
いや……めっちゃカップラーメン持っとるやんけ…!
そこには今まで見たことが無い親友の姿があった。教室で粉末スープを開けかやくを開け、魔法瓶の水筒に入った熱湯を容器に注ぐ。
いやいや、嘘やん。自分そんなキャラとちゃうやん。急にどうしたん。
周りの友達やクラスメイトも奇妙な目を親友に向ける。眼鏡をかけた真面目なタイプの親友どころか、クラスメイトの誰も高校の昼休みにカップラーメンを作っているところなんて見たことが無い。
「いや今日さ。俺もビックリしたんだけど、親がこれ持っていけってカップ麺と熱湯をさ――」
そんなことある?何かの罰ゲームじゃなくて?
心の中でツッコミを入れてはみるけれど、僕の親友は嘘偽りない表情で。むしろ眼鏡を湯気で曇らせながら恥ずかしそうに言っているのであった。
「なあ。いきなりだけど、お前って自分用のパソコン持ってたっけ?」
「え?持ってないけど。ほんといきなり何の質問?」
「いや、何でもない……」
僕は教室中に充満するカップラーメンの匂いと、パソコンが本物だったこと――2つの理由でごくりと喉を鳴らしたのであった。
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