プロローグ

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そしてゲンとコウサクは、リュウショウの誘いに乗った。 二日後、約束の場所でリュウショウは待ち構えていた。地平線がくっきりと見える平原。ワタリドリの群れが遠くに見える。 「フッ。来たようだな」 リュウショウがぱちんと指を鳴らすと飛行船が着陸してきた。 「な、なんだと!」 「詳しい話はなかでしようじゃないか」 二人はリュウショウとともに飛行船に乗り込んだ。 飛行船が高く浮かび上がる。眼下にはさっきまでいた平原が、街が見える。小さな湖や樹林も見えた。 リュウショウは数分の間下を眺めため息をついた。 「この辺はなもっと広いジャングルがあったんだ。それからあの湖だってもっと広かった」 コウサクは頭上に?を浮かべた。 「こんな上空でおっさんの昔話か?」 「いや、リュウショウはセンチメントに浸るような人物ではありません。きっとそれもなにかのヒント?」 「賢そうな坊や。鋭いな。そう俺のアイデアは、案外そういうところにある。俺の最高傑作であるコマンド・ファイターズもそうだ。あのゲームは俺が戦災孤児だったからこそ生まれたゲームなんだぜ……」 「はい、一見すると高クオリティの戦争ゲームですが、ゲームを進めれば進めるほど胸を裂くような体験ができますね」 「そうだよな。コマンド・ファイターズのヒロインが好きなんだが、あんな理不尽な結末ってないぜ……。俺みたいなチャランポランでも戦争反対って言いたくなっちまう」 「二人とも最高の評価をありがとう。やはり二人は俺の用意する更に高いステージで遊ぶべき人物のようだ」 ゲンとコウサクは高揚した。つまりリュウショウの言いたいことはこうだ。リュウショウは自身の最高傑作を越えるゲームを完成させつつある。 そしてそのゲームのテストプレイヤーとして二人に声をかけたというわけだ。 「地球は変わっていくよ。その変化を良くも悪くも速めているのは、他でもない人類という存在だ。要するに俺が気に掛けているのは環境問題や気候変動のことだ。意外か?」 「いや、分からんでもない。毎度毎度地球温暖化で夏はめちゃくちゃあちーし、災害だってある。災害と言やここにいるゲンだって……」 「コウサク。ぼくのことはいいとして、気候変動とか意外と興味あるよ」 「フッ。やはりゲーム魂のある人間は自ずと視野が広くなるのかもしれないな」 リュウショウはサプリ飲料をごくっと飲んだ。 「俺が次に仕掛けるゲームは、"ウェザーズ"。完璧な気候シミュレーションシステムと対戦ゲームを組み合わせた!プレイヤーはフィールド上で低気圧や高気圧を発生させ様々な気象現象を引き起こす!突風や高温や雪だ。そしてフィールド上で戦う様々な特徴を持ったドローンは気象現象の影響でパワーアップしたりパワーダウンする!リアルタイムで気候変動対策が叫ばれているなかでそれをゲーム化さしてしまうなんて大胆な発想だろう。このゲームにはゲーム魂のあるゲンとコウサク以外にも思想の強いやつや高い専門性を持ったやつらにも参加してもらう。いわば価値観のバトルだ。その様子はインターネットで世界中に配信する。プレイヤーたちにはたっぷり炎上してもらうぜ!」
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