輝く夢をつかめ

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山の中腹にある山荘はとても大きな建物で、木を組み上げたロッジのような外観だが、自家発電システムや浄水システムなどを兼ね備えた建物だった。 合宿は一週間の日程で、はじめはゲームから離れて、薪集めや水汲み、魚釣りに狩りや木の実の採集など生きるために必要な作業からはじまった。 もちろんこれはガチのサバイバルではないため、最低限の食糧(携帯食糧やレトルトカレー)などは持ち込まれたが、あえて不便な思いをするのもテフの考える練習のひとつなのである。 ゲンを加えた九人が集合したその朝はとても清々しい空気に満ち溢れていた。 ゲンはすべての仲間と握手を交わした。 コスプレイヤーでゲーム実況者のジンナだけは少し不満げな顔つきだ。 「はやくみんなとゲーム対戦したい。言っても最終的にはみんなゲームで競うことになるんだからいいでしょ」 テフはリーダーシップを発揮した。 「この合宿の目的はそのゲームに必要な天気読みのセンスを鍛えるためよ。薪集めだってゲームのアイテム集めに置き換えればいい。私だって大自然をアドベンチャーするときは、いかに楽しめるかを自分に課しているの」 そして九人はいくつかのチームにわかれ作業を開始した。 ゲンはジンナとペンギン大好きなギンマと薪集めである。 火のつきやすい原木や葉っぱを一定数集めればミッションコンプリートである。 ジンナは拠点から一番近くの木を適当に切ればどのチームよりもはやく仕事が終わるし、残りの時間で遊べると提案した。 生真面目なゲンは遊ぶつもりにはならなかったが、結果的に効率よく仕事ができるのでOKした。 二人はペンギンにしか興味がないギンマを連れて裏手の林に直行した。 そして先ほどレクチャーを受けた通りにオノを振りかざす。気分はすっかり木こりだ。 ギンマはのんきな口調で言った。 「今日はいい天気だ。一仕事終えたら見晴らしのいいあの丘でお弁当を食べよう」 「いいですね」 「わたしも初日のお昼用にコンビニでお弁当買って来ちゃったし、ちょうどいいわ。ついでにそこでゲームもしようよ」 三人はさっさと所定量の木を刈るとはやめに丘に急いだ。 そして三人がお弁当を食べようとした瞬間だった。 急に辺りが薄暗くなってきた。 「おや?」 なんとさっきまで晴れていたのに、急に雨が降りだした。 「こりゃたまらん」 三人は洞穴に逃げ込み雨宿りした。 「山の天気って変わりやすいとか言うけど本当だった!」 「すっかり油断していましたね」 「サイアク~」 初日から天気に振り回される三人であった。
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