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その時だった。 真上から声が聞こえた。 「お前ら、俺の秘密基地で何してんだ?」 声の方を見上げても薄暗くて顔が分からなかったが、声の主が誰かはすぐに分かった。 西成だった。 何故あのタイミングで現れたのかは分からなかったが俺や彰人にとっては奇跡的な瞬間だった。 「もしかして、出られなくなったのか?」と言って見下ろす西成。 「そうなんだ。俺らの背じゃ届かないんだ」と俺は助けを求めた。 「そうか。じゃあ、引っ張ってやるよ」 西成はそう言うと手を差し出した。彰人が我先にと手を掴んだが西成はその手を払って言った。 「違げぇよデブ! お前重たすぎんだろ。司を先に上げないとお前を助けられねぇから、待っとけ!」 彰人は泣きじゃくりながらも、もう一度足場になって俺に踏まれた。西成は両手で俺を引き上げると、 「せーの!」 と声を合わせて、一緒に彰人を引き上げてくれた。 彰人はすぐに梯子を降りて「お母さーーーん!!」と泣きながら走って行ってしまった。 俺は西成に礼も言わずに彰人の後を追った。 空には月が顔を出し始め、星々がつぶらに輝いていた。 家路に着くと母が受話器を持っていた。 警察に連絡を入れようとしたその最中だったらしい。 父と姉たちは俺を探しに車を出していて家にいなかった。 俺は、俺を抱きしめる母の胸の中で静かに泣いた。
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