やったな?

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やったな?

「いい加減白状しろ!」  店長は机を叩き、少年に詰め寄る。 「だから、やってねぇって! チッ、なんだよテメーよ」  少年は、心底イラつくと舌打ちを打つ。 「やるつもりだったろ、なあ」 「いやいや、だからやってねぇつってんだろ!」 「いや、絶対やるつもりだった」  店長はカゴからバールを取り出して机に置く。 「人……やるつもりだったよな?」 「…………しねぇよ」 「嘘つけ! なんだその間! 言っとくけどな、高校生がバールをレジに通す。これ、人殺します!」 「飛躍しすぎだろうがよ。……親父が買ってこい、つってたんだよ」 「今時家庭でどう使うんだバール。ええ?」 「DIYでつかんだよ」 「そうか、……わかった、まあ、これだけならそうだろうよ。……でも」  店長は渋々納得すると、またカゴの中を探る。 「これなんだ?」  取り出したのは、全身黒タイツ。 「やるつもりだったろ! これ着てやるつもりだったんだろ!」 「しねぇよ! なんで黒タイツ着て人殺すんだよ。怪しいだろうがよ!」 「怪しい奴はな、みんな黒いシルエットなんです!」 「どこの町の常識だよ……」 「じゃあ、なんでこんなの買おうとしたんだ、お前」 「……文化祭できんだよ」 「嘘つけ! お前みたいな一匹狼ぶった不良が、全身黒タイツ着て文化祭するわけないだろ!」 「うち、男子校だから……」  貧乏揺すりをしながら、憤る少年。 「……男子校なら、仕方ないか。でもな、これは言い逃れできないだろ」  店長は再びカゴの中を探る。  取り出したのは、ブルーシート。 「やったな、お前。もうやったな、山に埋めるつもりだったな!」 「スコップがねぇだろうがよ……」 「DIYやってんだろ? 親父さんから借りれるだろ! ……あとこれも!」  カゴから出したのは、ココア◯ガレット。 「全て終わったあとに一服するつもりで買ったんだろ!」 「言い方悪りぃけど、そこまでして食べる価値ねえよ砂糖菓子に」 「嘘つけお前、大人の階段これで登るつもりでいただろ! この出来事を墓まで持っていくつもりだったけど、自責の念から日記に記しちゃって、それを息子か孫に見られるのをきっかけに追憶と共に描かれる奴だろ!」 「別に、このミステリーがすごいじゃねーし……」 「ばかやろう! 本屋大賞だ!」 「どっちも取れねーよ。……あの、ほんと帰っていいっすか? 俺、これからダチと準備する約束なんで……」 「クッ、……わかった。すまなかったな。変に疑ったりして」 「ほんとっすよ。マジ、次やったら訴えてやるからな」  少年はパイプ椅子から立ち上がり、事務所を出る。途中、携帯が鳴り、少年はポケットから取り出した。 「もしもし……ああ……大丈夫、ちゃんと買ったから」  その際、ポケットから四つ折りの紙が出てくる。 「おい、なんか落としたぞ……て、おい! ……たく」  少年は事務所から出る。 「なんだこれ……?」  店長は四つ折りになった紙を開いた。  そこには、怪しげな童歌が書かれていた。 「アイツ! 仲間と歌に沿って連続猟奇殺人するつもりじゃねーか!! おいまて……! こら! じっちゃんが黙ってねーぞ!!」  急いで店長は事務所を出て、少年の後を追いかけた。
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