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見渡した東京駅のホームは、GW明けのビジネスマンで埋め尽くされていた。機敏な動作が、泳ぐペンギンの群れに似ている。
漫画の資料として写真に収めたい衝動を抑え、萌絵は缶コーヒーを飲みほしてゴミ箱に捨てた。
20代半ばに入ると、さすがに肌荒れが気になる。そんな少女漫画家の本音を抱きつつ、もう次の構想を練っている自分に呆れて苦笑した。
ティーンズのファッション雑誌で考察し尽くした、センス抜群のヒロインからは程遠い。萌絵なんて、モブキャラのように無個性な装いだ。
萌絵を運ぶ特急列車は、音もなく東京駅を遠ざかる。急速に流れる景色を見るうちに、萌絵は空腹を覚えた。
食堂の厨房に立つ父の後ろ姿が、何となく寂しさを増したのは、いつからだろうか。
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