弓張りの月

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 企画を進める間に、課長は感性が若く、おしゃれで素敵な女性(ひと)だということがわかった。 「私たち似ているかもしれないわ。もっと感性を磨きなさい」 その企画を終えると、課長は、私の好みだけど、と美術展のチケットを二枚くれるようになった。 「彼女とどうぞ」 でも僕には特定の相手がいなかった。何度目かのチケットをもらったとき、僕は思い切って頼んだ。 「課長、僕と一緒に行きませんか」 課長は目を丸くした。 「え? 私と?」 「いつもいただいたチケットを一枚、無駄にしているんです。申し訳なくて」 課長は眉をしかめて考えていたが、 「そうねえ、まあいいか。星野君がいいなら」 と笑った。  それが二人で会うようになったきっかけだった。そのうち僕は課長を月子さん、と呼び、月子さんは僕を大志(たいし)君、と呼ぶようになった。
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