嫌い、嫌い、大好き

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「どうでしょう。いくつか質問するので、『はい』か『いいえ』で答えてみてください。あなたは嘘つき病の治療のためにこの病院に通院していますか?」 「……いいえ」 「うーん、まだ効果が出ていないのでしょうか。もう少し様子を見てみましょう。念のため、追加で涙の採取をお願いします」  落胆しながら病院を後にした。ひょっとしたら、と期待したのに。量が足りなかったのかもしれない。医師が言うように効果が出るまでに時間がかかるのかもしれない。そう考えて自分を励まそうとしたけれど、(しぼ)んだ気持ちはなかなか元通りにならない。  部屋でひとり、膝を抱える。流れる涙を拭おうとして手を止めた。貴重な涙だ。採取しなければ。必死に試験管に涙を集めている自分の姿を客観視すると、なんだか滑稽だ。だとしても、それに(すが)るしかないのだ。  翌朝、鏡の前に立ち、ここ最近の確認作業を実施した。 「わたしは嘘つき病を治して、広瀬に告白します」  自分の耳を疑った。ちゃんと、言えてる? 慌てて病院に電話をした。必死に考えて喋らなくても、意図したように言葉がすらすらと出てくる感覚は久しぶりだった。  病院に着くと、さっそく診察室に通される。医師とも何度か確認して、やはり噓つき病の症状が綺麗さっぱりなくなっていることがわかった。効果はちゃんとあったらしい。 「広瀬は? 彼も治りますか?」 「彼にも先程を服用してもらいました。古川さんと同じであれば、半日もすれば治るでしょう」  今すぐにでも広瀬に会いたかった。けれど、広瀬はまだ治っていないかもしれない。浮かれるのはまだ早い。時計と睨めっこしながら、時間が過ぎるのを待った。
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