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優しいお客サマ
「貴女様はここに居て幸せですか?」
優しい客がそう言った。
「不幸せに決まってるじゃない……」
もう限界だったの。つい本音が漏れてしまった。
「はっ……い、今のは違いんす……わっちは幸せでありんす…!」
取り繕ってももうダメ。お客サマは予期してない返答に目を見開いていらっしゃるわ。
あぁ、もう。こんなの知られたらどうなるか……。
「そうですか。じゃあ何故、私を客として受け入れてくださったんですか?」
「それは……」
やけくそだった。もうどうでもいいから貴方の相手をして、適当にお金を稼ごうと思ったのだ。
「私は貴女さまを一目見たとき、惚れました。だから貴女様に全てを捧げました。ですがもう銭がないのです。これが最後になるでしょう。
……そこで提案です。罪人になりましょう。私と一緒に逃げてください。」
駆け落ちしましょう…じゃなくて逃げましょうなのね。このお客サマは変わってるわ。頭が少々イカれてる。
でも……これで私は自由になれる……?
暗闇の中に一筋の光が差し込んだような気がしたわ。
気づいたら私は「はい」と言っていた。
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