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【 第八話: 彼女の手 】
俺は咄嗟に体が動いていた。
彼女の元へと走って行き、ジャンプして金網を乗り越え、まさに飛び降りようと体が宙に浮かんだ瞬間、俺は彼女の手を掴んだ。
「柚葉っ……!! 何でこんなことをーーっ!!」
すると、手を掴まれ宙ぶらりんになっている彼女は、こんな不思議なことを口にした。
「彼女を……、彼女を救ってあげて!」
「今、助けようとしてるだろぉーーっ!!」
「柚葉ちゃんを……、柚葉ちゃんを救ってあげて!」
「どういうことだぁーーっ!!」
俺は力の限り、彼女の右手を掴み、左手で金網を握り、必死に答える。
「今度こそ……、今度こそ、柚葉ちゃんを助けて欲しいの! もう、二度と彼女の手を離さないで欲しいの!!」
「お前が……、くっ……、お前が、柚葉じゃないのかぁーーっ!!」
「私はあの御嶽古道を切り開いた修験者『普寛』の末裔……。柚葉ちゃんは、私の……、私の子孫なの!!」
「な、何ぃーーっ!! くっ、くぅーーっ!!」
彼女は、とても信じられないような言葉を発した……。
「だから……、今すぐ彼女の元へ行って、彼女を守ってあげて! もう二度と、彼女の手を離さないで!!」
『ガバッ!』
「はぁはぁはぁ……」
気付くと俺は、自分の家のベッドの上にいた。
あれは、夢だったのか……。
それとも……。
(「もう二度と、彼女の手を離さないで!!」)
確かに彼女は、そう言っていた……。
俺は、布団から飛び起きると、靴も履かずに、窓から外へと飛び出し、病院へと走り出していた。
柚葉の元に、向かうために……。
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