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【 第九話: 急げ!! 】
「はぁはぁ、はぁはぁ、柚葉……、待っててくれ……!」
彼女の入院している病院の夜間救急入口から中へと入って行く。
「あっ! 君っ! ここに名前を書いて!」
「ごめんなさい! 今、急いでいるので、後で書きます!」
「君っ! 待ちなさい!!」
俺は階段を駆け上って行く。
さっき俺が見たのは、柚葉じゃない……。
何かがおかしい……。
何かがおかしいんだ……。
「はぁはぁはぁ……」
『バンッ!』
病院の屋上のドアを勢いよく開けた。
『ヒューーーーッ……』
そこで見た光景……。
屋上の金網を越えて立っている……
柚葉の姿だった……。
「柚葉ぁーーーーーーっ!!」
振り返った柚葉の目には、キラリと涙が月の光に反射している。
やがて、その大粒の涙が頬を伝うと、この屋上の冷たい風に引き剥がされ、どこかへと輝きながら飛んでいくのが見えた……。
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