【 第九話: 急げ!! 】

1/1
前へ
/14ページ
次へ

【 第九話: 急げ!! 】

「はぁはぁ、はぁはぁ、柚葉……、待っててくれ……!」  彼女の入院している病院の夜間救急入口から中へと入って行く。 「あっ! 君っ! ここに名前を書いて!」 「ごめんなさい! 今、急いでいるので、後で書きます!」 「君っ! 待ちなさい!!」  俺は階段を駆け上って行く。  さっき俺が見たのは、柚葉じゃない……。  何かがおかしい……。  何かがおかしいんだ……。 「はぁはぁはぁ……」 『バンッ!』  病院の屋上のドアを勢いよく開けた。 『ヒューーーーッ……』  そこで見た光景……。  屋上の金網を越えて立っている……  柚葉の姿だった……。 「柚葉ぁーーーーーーっ!!」  振り返った柚葉の目には、キラリと涙が月の光に反射している。  やがて、その大粒の涙が頬を伝うと、この屋上の冷たい風に引き剥がされ、どこかへと輝きながら飛んでいくのが見えた……。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加