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【 第十話: 神の教え 】
俺は、手話で彼女に気持ちを伝える。
自分を指差し、次に彼女を指差す。そして、親指と人差し指をVの字から喉に当て、指先を閉じながら下へと下ろす。
(俺は、お前のことが、好きだ)
そして、左手の甲を右手でやさしく撫でるように回しながら、こう言った。
「俺は……、柚葉のことを、愛している。もう二度と……、後悔したくないんだ……」
柚葉はそれを見て、右手で金網を掴んだまま、左手で顔を覆い、泣いているようだった。
でも、彼女がなぜか首を横に振る仕草をする。
その瞬間、顔を上げると、この月夜の空を見つめながら背を向けた。
そして……、
彼女の体は、ゆっくりと宙に浮いた……。
「柚葉ぁーーーーーーっ!!」
『パシッ……!』
俺は金網を飛び越え、柚葉の手を強く握っていた。
もう、後悔したくない……。
彼女が知らせてくれたんだ……。
柚葉の祖先である、あの御嶽古道に祀られた柚葉の先祖の神が教えてくれたんだと思う。
もう一度、やり直せるように……。
(「もう二度と、彼女の手を離さないで!!」)
時を……、
時を戻してくれたんだ……。
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