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【 第七話: 彼女を追って 】
「はぁはぁ、はぁはぁ、柚葉っ! ま、待ってくれ!!」
彼女は入院している病院の夜間救急入口から中へと入って行った。
俺もそれを追う。
「あっ! 君っ! ここに名前を書いて!」
「ごめんなさい! 今、急いでいるので、後で書きます!」
「君っ! 待ちなさい!!」
俺は、階段を上って行く彼女を追う。
彼女は、いつもの彼女ではない……。
足も骨折していたはず。しかも、元気な時ですら、あんなにも脚力はなかったはず……。
何かがおかしい……。
何かがおかしいんだ……。
「はぁはぁはぁ、ま、待って! 柚葉っ! はぁはぁはぁ……」
『バンッ!』
彼女は病院の屋上のドアを開けた。
俺もそれに続き、屋上へと出る。
そこで見た光景……。
彼女が、屋上の金網を乗り越え、5階以上あるこの病院の屋上から、今にも飛び降りようとしていた。
「柚葉っ! なぜ、そんなことを!」
俺は足が竦んでしまい、彼女の元へと行けないでいる。
「彼女を……、彼女の側にいてあげて……」
「えっ……? な、何を言ってるんだ、柚葉……」
「彼女をひとりにしないで……」
俺は柚葉の言っている意味が分からなかった。
すると、彼女は、ここから飛び降りようとしたんだ……。
この病院の屋上から……。
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