ジン

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ジン

人狼のオレは、みんなからジンと呼ばれていた。 「グアアア・・・朝か」 朝日がどうにも苦手なオレ。 しかし、オレの仕事は妻が出勤する前に朝食を準備すること、起きないとな。 冷蔵庫から食材を取り出す。 「卵を2個、ベーコンを1枚用意してと」 毛が入らないように卵を割り、目玉焼きを作る。 「ジューーー・・・」 その間にパンをトースターで焼き、昨日の夕食で残ったサラダをテーブルに置いて朝食の出来上がりだ。 「ヨシ、次だ」 寝室に戻って、 「ガルルル起きなよ」 妻を揺すって起こす。 「ふあああ、おはよう。ジン君」 「おはよう」 妻の名前は赤里(アカリ)、絶世の美女である以外は普通の人間。 「朝食の準備できてるから食べて」 「うん、ありがとう。あれ?ジン君は一緒に食べないの?」 「・・・・・」 オレが黙り酷っていると、妻の表情がみるみる変わる。 「また、夜中に何か食べたでしょ!」 妻は怒らせると恐ろしい、だからオレは正直に答える。 「実は夜中にお腹空いて・・・」 「何を食べたの!」 「昨日、買っておいた鶏肉をパック半分ほど」 「まさか生で食べた?」 「いや、まあ、うん」 「もう、太るし、いつかお腹壊すよ」 「いや、気をつけようと思ってるけど、本能に負けてしまって・・・。あっ、洗濯しなきゃ!」 妻の説教から逃れるため、洗濯の準備を始める。 そう、オレは専業主夫。 仕事の準備を終えた妻は、笑顔で玄関先に立つ。 「行ってくるね、ジン君!」 機嫌が直ったようだ。 「グフフフ」 安心したオレは笑う。 「行ってきまーす!」 「行ってらっしゃい!」 妻を見送ったあと洗濯物を干し、掃除機をかける。 「掃除機の吸引力が落ちている」 穴を覗く。 「あっ」 オレの抜け毛が詰まっていた。 掃除機をコロコロに持ち変えて、床を掃除する。 「こんなもんだろ」 と呟いた矢先に毛が落ちる。 「・・・見なかったことにしよう」 次は広告のチェック。 「グルルルル、卵が特売1パック80円!これは必ずゲットだな。おっ、手羽先が安い!肉もストックがないから買わないと。でも、牛肉が喰いたいなあ」 広告を眺めていると時間を忘れてしまう。 「おっ、もうそろそろ開店時間だ。急いで行かないと卵がなくなってしまう!」 オレは外着に着替えて、四足歩行で行きつけのスーパーへ急いだ。
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