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ポッポ
夜。
西川邸でゴリラの薫を交えて、食事会が行われた。
彼が言うにはここから少し離れた早乙女邸に老夫婦と暮らしていたらしく、子供のいなかった老夫婦は絶滅危惧種の彼を何らかの方法で手に入れ、誰にも悟られずに我が子のように育てていたらしい。
結局、老夫婦は交通事故で他界、残った薫は山へと逃げ込んだ。
野生のゴリラでない彼は腹が空いて彷徨っていたところ、西川さんの畑にたどり着いた。
これが経緯、知能指数が高いことに関しては不明だ。
で、たまたま現れた人狼のオレに身の危険を感じて防衛本能が働いたらしいが、いい迷惑だ。
西川さんは薫の話を聞いて涙を浮かべ、
「早乙女さんは知っておる。ありゃ不幸な事故じゃったな、今後はわしの家で暮らすといい」
一緒に暮らす決意を固めた。
薫も涙を浮かべ、
「ありがとうございます!」
と言って頭を下げた。
こうして西川さん畑荒らし事件は解決されたが、
「あのー、豚の件は?」
まだ、お礼を貰ってない。
「忘れとったわ。おい、孫よ、ジンさんに豚を献上しなさい」
オレの腹と胸が高鳴る。
「はい」
返事をした孫娘が数秒後に連れてきたのは、
「ブヒブヒ」
小さな子豚だった。
オレの想像を遥かに越えるほどの、ミニサイズの子豚。
「ミニ豚のポッポちゃん。食べちゃダメじゃよ」
西川さんと店長は笑う。
オレは笑えない。
「ブヒブヒ」
ポッポはオレにすりより、喜んでいる様子だった。
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