。゚.+序章+.゚。

10/22
前へ
/42ページ
次へ
リンダは自分の部屋に戻るなり、床に座り込みベッドに顔を埋め、声を殺して泣いていた。 「私が…ラオン王子と、なんで……結婚…しなきゃ、いけないの……。 お祖父…様なんて……大っ嫌い……。」 「姫様……。」 メイドはリンダに近付こうとするが、途中で首を振りそっと部屋を出て行く。 「今はお一人にしておくべきですね……。」 扉を閉めるとそう言い、懐から頑丈そうな鉄の錠前を出した。 「すみません姫様…ですがこれは大王様のご命令なので……。」 すまなそうに呟くと、両開きの扉に確りと錠前を取り付け、その場を去った。 どれくらい経っただろうか……。 気付くと窓の外は闇に包まれ、月明かりが暗い部屋を幻想的に浮かび上がらせている。 赤く熱を含んだ目を擦り、夜空に浮かぶ月を見上げた。 その黒い瞳からは、怒りや悲しみは消えていた。 「ここを出よう……。」 そう静かに呟いたリンダの瞳は新たな光を宿していた。 リンダは小さな決意を胸にそっと立ち上がると、扉に手をかけた。 「えっ、開かない!?」 押しても引いても扉はびくともしない。 唇を噛み締め呟いた。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

440人が本棚に入れています
本棚に追加