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リンダは自分の部屋に戻るなり、床に座り込みベッドに顔を埋め、声を殺して泣いていた。
「私が…ラオン王子と、なんで……結婚…しなきゃ、いけないの……。
お祖父…様なんて……大っ嫌い……。」
「姫様……。」
メイドはリンダに近付こうとするが、途中で首を振りそっと部屋を出て行く。
「今はお一人にしておくべきですね……。」
扉を閉めるとそう言い、懐から頑丈そうな鉄の錠前を出した。
「すみません姫様…ですがこれは大王様のご命令なので……。」
すまなそうに呟くと、両開きの扉に確りと錠前を取り付け、その場を去った。
どれくらい経っただろうか……。
気付くと窓の外は闇に包まれ、月明かりが暗い部屋を幻想的に浮かび上がらせている。
赤く熱を含んだ目を擦り、夜空に浮かぶ月を見上げた。
その黒い瞳からは、怒りや悲しみは消えていた。
「ここを出よう……。」
そう静かに呟いたリンダの瞳は新たな光を宿していた。
リンダは小さな決意を胸にそっと立ち上がると、扉に手をかけた。
「えっ、開かない!?」
押しても引いても扉はびくともしない。
唇を噛み締め呟いた。
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