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地面の草がクッション代わりになり、衝撃が幾らか軽減されたが、それでも痛いのには変わりない。
慣れない魔術を使ったせいか、体は鉛のように重く、眠気におそわれる。
だが、こんな所で眠れば直ぐに見つかってしまう。
森の中にさえ入れば、樹々に紛れ休む事も出来るけれど……。
リンダは目の前に広がる、広大な森を見た。
木の葉についた夜露が月明かりを反射し、森全体が青白く浮かび上がっているように見える。
リンダは決意を固め、立ち上がろうとした瞬間、右足に鈍い痛みが走り顔を歪める。
「痛っ。」
落ちた時にひねったのだろうか。
ブーツの上から足首を触る。
「もっと魔術が上手かったら、治せるのに………。」
だが、ぐずぐずしている暇はない。
痛みに顔を歪めながら、どうにか立ち上がると、右足を引きずりながら、よろよろと森の中へ入って行く。
そんなリンダの姿を、月明かりが優しく照らし出し、星々は静かに見守っていた。
セルーヤの森には、古くからたくさんの伝説が残っていて、一節には、精霊も住んでいるという噂がある。
そんな不思議な森に足を踏み入れた瞬間、土のむっとする強い香りが、リンダを包みこんだ。
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