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夜露を載せた緑色の若葉は、月明かりを反射しキラキラと輝き、森全体に幻想的な雰囲気を漂わせている。
地面のそこかしこから木の根が張り出しており、夜露で濡れて滑りやすくなっている。
けれど足元は、葉の間から入ってくる月明かりが照らしてくれているおかげで難なく歩ける。
が、今のリンダは泥だらけで、夜露を吸って重くなったドレスが邪魔になり歩き辛い。
その上怪我をした右足を引きずっているので、何度もこけそうになる。
木に手をつきながら、フラフラと進むリンダの顔は、右足を動かす度に走る痛みで苦痛に歪み、疲労の色が見える。
「はぁ、はぁ…。」
息は上がり、フラフラと森の中を進む内に、脳裏に浮かぶのは大王の顔である。
「理由が…解らないわけじゃ無いよ……。
でも…よりによって、なんであの王子なの………。
あんな王子と、結婚…させられる、くらい…だったら……家出してやる……。」
だが、そう考えている内に徐々に現実が見えてきたリンダは、だんだんと不安になってきた。
「でも、これからどうしよう……。」
森の中を冷たい夜風が通り過ぎ、リンダは身震いし、ショールを体に巻き付けた。
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