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リンダは警戒しながら、周囲に向かって叫んだ。
「誰!?
何処にいるの!?」
こんな森の奥に人が居る訳がない。
魔物と言っても、言葉を理解し話す事が出来る魔物は、上級の魔物に入り今のリンダに勝ち目はない。
いつの間にか頬を冷や汗が伝う。
すると再び森の奥から声が聞こえてきた。
「こっちよ……。」
リンダが怖がっているのがわかったのか、まるで安心させるかのように、優しい声が聞こえる。
何故かわからないが、声のする方へ行かなければならない。
そんな気がし、足を引きずりながら、声がした方へゆっくりだが、確実に進んで行く。
「ここへ来なさい。」
いつの間にか疲れを忘れ、声に導かれ奥へ進むにつれ、周囲には霧が立ち込め、徐々に深くなり、ついには前に伸ばした手の指先さえ見えなくなった。
それでも歩みを止めず、声を頼りに進んで行く。
「こっちよ!」
徐々に声の口調は強くなり、声も大きくなっていく。
足の痛みは更に激しくなり、体は寒さでこわばる。
だが、それでもリンダは歩みを止めなかった。
自分でも良くわからないが、その感情は制御出来るような物ではなかった。
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