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「聖獣とは魔術師が連れている獣であり、皆オッドアイの眼を持っています。」
机を挟み、分厚い本を片手に説明する女性と、羽ペンを片手にぼーと窓の外を見つめている少女。
「コホンッ。」
女性のわざとらしい咳払いが聞こえていないのか、少女のその黒い瞳がこちらに向けられる気配はない。
「コホンッ!」
先程より大きな咳払いをしたが、少女は窓の方へ顔を向けたままだ。
「リンダ様!
聞いていらっしゃるのですか!?」
所々とげのあるその言葉には、苛立ちが含まれている。
リンダと呼ばれた少女は肩をビクッとさせ、慌てて女性の方に向き直った。
「き、聞いてるよ。」
「…それならいいです。」
不服そうな顔で、そう答えると、再び説明を始めた女性。
それを尻目に、リンダは再び窓の外に視線を戻し、憂鬱そうに小さなため息をついた。
それに合わせ、腰のあたりまで優雅に流れる黒髪が微かにゆれる。
そして、チラリとリンダの方を見た女性の顔には諦めの色が見えた。
ボーン、ボーン、ボーン
柱時計の時を告げる音が部屋に響く。
「…それでは今日はここまでにいたしましょう。」
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