1.ある鯉のひとりごと

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 だが俺は所詮鯉だ。でかい金魚鉢にうっすら反射する自分の姿をみて確信したけど、赤と白の錦鯉だ! ぴちぴちはねて必死に抵抗しても、網ですくわれて怪しげな壺にどぼんよ。  ぎゃああああああーーーー  その瞬間、俺の口から悲鳴がほとばしった。  熱いとかじゃなくてさ。なんかおぞましい感じっていうか呪いのお湯みたいなのに浸かってめっちゃ気持ち悪かったわけ! わかる!? この気持ち悪さ! わかんないよね!?  でさ、もう無理だと思って俺はぴちぴち暴れたの。そりゃあもうぴちぴち。そしたらなんか上手くいって、壺が倒れてそのまま謎のお湯と一緒に排水口のほうにだーっと流れていっちゃってさ。気がついたら下水みたいなとこにいたのね。  まあ、ばっちいけど、泳げなくは、ない。呪いの水よりややまし? でも嫌だったからひたすら下流の方に泳いでいったの。これって下水管だろうから上流いってもどっかの家のパイプにつながってるだけでしょ?  どんだけ泳いだかな。しばらくしたらやっと奇麗な川にでてまじかよ! って思った。あんなヤバ気な薬品を川にそのまま流してるのかよ……。この世界にエコはない。  でもとりま、なんか自由になったからふよふよ泳いでたら滝についたんだよね。なんか奇麗な滝。そうすっとなんか頭の中で言葉が浮かぶの。 『タケシよ、滝を登りなさい』  タケシって俺の前世ネームな。これは神様の思し召しだと思ってそりゃあ頑張って登ったんだよね。それに鯉って滝を登ったら龍になるんだろ?  それにここにいてもなんかヤバ気なでかい魚がごろごろいて死ぬ気がしてきたし。きっと登りきったらチートだ! と思って頑張って。なんか変な液につかったご利益があったのか、妙にもりもりと力がでてきたんだよ。そんでさ、頑張って、歯を食いしばって滝を登りきったらさ、体が変化してきたんだ。  やった! 龍になれる! これが俺が本来たどるはずだった奇麗な運命なんだ! 龍になったらきっとモテモテ!  そう思ってたのにさ……。  なったよ、龍になったよ。でも邪龍だったよ。わかる? 俺の気持ち。やっぱあの闇堕ちした魔法使いみたいなのの液にまみれたのが悪かったんかね? 俺なんもしてないのにさ、討伐隊組まれてさ、だから逃げ回るしかないの。強くなったけどさ、チートはあるけどさ、こんなこと言えるのは同じ転生者のあんたぐらいだよ。聞いてくれてありがとね。でも俺おなかすいててさ、ほんとごめん。ちょっとこれ本能で。まじ、ごめん。  そうして鴨に転生していた私は目の前のでかい邪龍に丸呑みされた。 -おまけ Temppは「闇」「いけにえ」「きれいな運命」を使って創作するんだ!ジャンルは「邪道ファンタジー」だよ!頑張ってね! で勢いで書いてみました。
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