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「わぁ、そうなんですか?おめでとうございます!」
「ありがとう。これ、どうぞ」
彼女はヘアアイロンを手渡すと、美織君は素早く鞄の中に仕舞い、「デートのお邪魔してごめんなさい。じゃあ、私はこれで!」とペコリと頭を下げ、いそいそとその場を去っていった。
「明るい子だね」
赤らめた頬をそのままに、彼女は言った。
「ああ、そうだね」
でも彼女、在学中は大変だったんだ。
「じゃあ、行こうか」
だけど、あの事を彼女に説明する機会はないだろう。
美織君も、あの宝飾店の男性に金満への依頼したのが僕だとは知らない。
これから人生を共に歩んでいく彼女にも、昔の恋人を母校の教師のせいで失った事を言うつもりもない。
誰だって、知らない方がいい事だってあるんだ。
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