暗いの…怖い

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「それではカウントダウンに入ります!」 テレビの中で興奮した様子のアナウンサーが、後ろにある大きなモニターを指差す。 モニターには大きく 00:09:55 数字がどんどん減っていく。 日本の夏。 毎年電力の供給が不安定となり、節電の声が方々から上がる。 「節電にご協力下さい」 「無駄な電気は切りましょう」 「電気の消し忘れに注意」 などなど。 小学生の描いたポスターや、 シルバーの方々の秀逸な標語。 更には昼間のテレビの情報番組でも 「このまま電気を使い続けると、電力の供給が間に合わなくなり計画停電になってしまいます」 と悲壮な表情でテレビの前の視聴者に訴えかけていた。 今年は特に世界的に蔓延した危険なウィルスのせいで在宅生活を強いられた結果、電力消費量が格段に上がってしまっているらしい。 各家庭の家電製品が充実したのだから、当然といえば当然の結果なのだと思う。 そして、政府の打ち出した画期的な打開策が…… 全国一斉計画停電だ。 8月の某日。 土曜日夜の8時から12時間。 日曜日の朝8時までの一斉停電で、一気に電力量を落とし、その間に各箇所のメンテナンスを行って無駄な送電や省電力を完璧にする手筈らしい。 もちろん電力が必要な病院や工場、介護などで個人でも電力の必要な家庭、その他、事前に承認を得ている施設なんかはしっかり電力の確保はされている。 「さあ、停電まで1分を切りました!」 アナウンサーが大興奮で話している。 私は一人暮らしのマンションの部屋でテレビを見ながらその時を静かに待っている。 食事も終わり、お風呂にも入った。 携帯の充電も終わってるし、冷凍庫も空にしてある。 冷蔵庫は開けなければ朝まで大丈夫との話だった。 ベッド脇には大きめのマグポットに氷水を用意した。 私は朝の8時までの12時間を睡眠に当てるつもりだ。 職場は土日休みのため、何の問題もない。 そして……
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