願い

1/1
213人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ

願い

「月の子はね、たくさんいたんだよ。20人か30人くらい!」 「そんなにたくさん友達がいたら、ケントも寂しくないよな。よし、お友だちの分もお菓子用意しなくちゃ!」  お父さんは泣きながらおばあちゃんちの縁側にお菓子やジュースを一杯並べた。  夜明け前、雨戸を開けて僕たちは静かに縁側から庭に出る。 「月の子のみんな。ケントと仲良くしてやってくれな」  お父さんはそう言って月に向かって手を合わせた。  返事をするように風がヒューリルと音をたてる。  縦笛を鳴らして笑いながら飛んでいく月の子たちが、うっすらと朝日の中に見えた気がした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!