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「樹里さん、あなたにはおわかりなのでは?」
川谷の視線がまっすぐ樹里に向けられる。正しくは、樹里が腕に抱きかかえるようにして持っている――トートバッグに。
「わかりました。……ええ、伝えておきます」
そう返して、美園は電話を切った。
「遠山君の言った通りだって」
水内家のリビングには、美園の他に小春と透子、悟見と真実、そしてゆり絵――樹里以外の全員が集まっていた。
「じゃあ……」透子が言った。
「うん。凶器……樹里ちゃんのトートバッグから見つかったって。布でくるんであったけれど、血もついてたそうよ」
「まさか、自分で病院に持って行ってたなんて……」小春が呟いた。
「本当は部屋の天井裏に隠すつもりだったけれど、脚立から落ちたあとの体の痛みでそれができなくなったんだろう」悟見が言った。
「樹里さんはこれから自分が病院に行くことはわかっていたから、凶器をバッグの中にしまったんだと思う。自分の近くに置いておけば、誰かに見つけられる心配もないし」
「それで、凶器って一体何だったんですか?」小春が言う。
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