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あの日から数年後、私は今日もお化け屋敷で元気よく働いている。
「ばぁあ!!」
「あはは! おもしろーいっ」
「え!?」
この反応は初めてだ。
予測してなかったお客さんの反応に私は戸惑ってしまう。
お客さんは小さな男の子。絶対驚くと思っていたのに。
「……怖くないの?」
「ぜーんぜん!」
男の子はにっこりと笑った。
その微笑みは、どこかで見たことがあるような……
「だって、パパが言ってたもん。おばけとも友達になれるんだって!」
「……!」
「じゃあねっ」
パタパタと男の子は一人で走って行った。
いつかの男の子は非常口まで送っていったというのに、勇敢に走っていく姿を見て「そこは似なかったんだなぁ」と呟いた。
「似てるところもあったけど」
やたらと友好的なところとか、優しい笑顔とか、やっぱり大好きなあの子とそっくりで。
いや、それよりも……
「友達だって」
初めて出来た人間の友達。
それを知るには時が経ちすぎていたけれど。
実らなかった初恋には友情が芽生えた。
そして、
「私、あの子の友達になるんだからね!」
「あんなに小さい子興味ないわよ」
張り切る私を相手に、ろくろさんはため息を吐いた。
おばけの私に新しい恋の予感です。
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