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私はあの男の子のことが忘れられなくなった。
「また来ないかなぁ」
そう思いながら私が墓石に座っていると、
「ばあっ!」
後ろから大声がして墓石から転げ落ちそうになった。
振り返ると男の子が悪戯っこのように舌を出して喜んでいた。
「えへ、おばけちゃんのマネ~」
「び、びっくりしたよもう……」
あはは、と二人で笑う。
男の子が遊びに来てくれたことが嬉しい。私にとって、この時が一番幸せな時間だった。
「おばけちゃんって小さいまんまだね」
「そうだね。おばけだし」
「それに、いつも白い服だよね」
「そうだね。おばけだし」
「成長して服がキツくなったりしないの?」
「そうだね。おばけだし」
「おばけだし?」
私の答えに男の子が小首を傾げる。頭上にはクエスチョンマークがふよふよと浮かんでいるように見える。
私は私で緊張して話すのがやっとだったから、男の子が帰ってからやっと自分の会話の噛み合わなさに気づいた。
「もしかしてあの子、私が本物のおばけってわかってない……?」
普通に考えて、遊園地のお化け屋敷の従業員が本物のおばけなんて誰も想像しないだろう。
でも、男の子と出会ってから少しだが時が経っている。
いつまでも容姿の成長がみられない私に多少の違和感が生まれてもおかしくないと思う。
現に男の子の身長はまた伸びていた。
男の子と自分の間に時の流れという弊害を初めてこの時感じた。
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