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「あれぇ、なんか君おしゃれになった~?」
唐笠お化けが下駄を弾ませながら私の頭についたお花を見て言った。
それを聞いて隣で休憩していたひとつ目小僧も会話に参加してくる。
「そうそ、洋服も白じゃなくなってるし。お化け屋敷にパステルカラーは似合わないよ。君には似合ってるけど」
私はあの日から容姿に気を配るようになった。
洋服やメイクで外見を大人っぽくすることは可能だといつか読んだ雑誌に書いてあった。
成長がみられなくても、おしゃれに磨きをかければいい。
私はファッションの本や恋占いの本をいっぱい読んで勉強した。
「恋ってのは人を成長させるね~」
「人っていうかおばけですよ、僕たち」
唐笠おばけとひとつ目小僧は私を生暖かい目で見守ってくれている。
二人は私の変化を快く受け入れてくれた。それどころか応援してくれている。
二人の期待にも応えたい。私は恋の炎を燃やしていた。
それなのに、
「新入りが入ったぞ」
「轆轤首のろくろですぅ。よろしく~」
ここに来てまさかのライバルが現れた。
新入りのろくろさんはとても綺麗で容姿も垢抜けていて、首が長いのはたまに傷だけど、私の理想の姿だった。
大人びたお姉さん。私が目指していたもの。
あれから時が過ぎ、男の子は少年から青年に変わっていた。
今の男の子に釣り合うのは、私のような子供じゃなくて、ろくろさんのような女性がぴったりの歳になってしまったのだ。
「うらめしやぁ」
「うおっ」
青年になった男の子は友人を連れてお化け屋敷に来たとき、ろくろさんを見て驚いた。
「びっくりしたー」
「お前ビビりすぎ。しかしこの轆轤首すっげえ美人だな」
「お姉さん今度お茶しない?」
どこか軽くてガラの悪い友人二人はろくろさんを見て騒いでいる。
私は休憩中だったので隅っこで見ていることしか出来なかったけれど、男の子も時が流れるにつれて変わっていったことが見てとれた。
「意外な友達だったな……しかし」
格好良く成長したなぁ。
男の子の身長はぐんと伸びていて、着ている服も素朴だったものから洗練されたものになっていた。表情もどこか大人びていて、もう自分の知っている男の子じゃないように感じ。
ろくろさんのことだけじゃなく、また少し距離が遠のいた気がした。
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