愛の守護者

1/2
前へ
/25ページ
次へ

愛の守護者

『勝者には愛と強さが求められます』 「そうなんですか?」  各自にプレゼントされたスマートウォッチは有名画家の名で特別なアシスタント機能があり、最良のパートナーとして九人の女戦士をゴールへ導くが、勝ち残って賞金を得るのは簡単ではない。  剣崎乃武子は道場生の子供たちを帰して道場を閉めると、隣接した家の二階の部屋に入ってジャージに着替え、スマートウォッチを机の上に置いてダヴィンチと話した。 「とにかく、もっとわかりやすく説明してくれない?だって賞金額が凄すぎて怪しいわよ」  乃武子は賞金十億円と聞いて、借金を完全に返済する千載一遇のチャンスだと内心は喜んだが、はしたない態度で参加するつもりはない。 「しかも、愛ってなんなの?」  仮にも武道を志す者。【何事も武士道精神で挑むべし】をモットーにしている。恋も戦いも乃武子にとっては自分を高め、義を尽くさねならぬ。  朝倉は「三日間だけ、待ってやる」と言い残して、まだ文句の言い足りない柴田を連れて道場を去った。  忠信はもう借金の心配も無くなったと安心し、お風呂に入って鼻歌を響かせ、夕食の晩酌を楽しみにしている。 「おじいちゃんは呑気だから。私がしっかりしないと」  乃武子は赤いジャージで織田信長の家紋『織田木瓜(もっこう)』の鉢巻をして気を引き締めて画面を睨み、可愛らしくも女戦士の意気込みをスマートウォッチのレンズでダヴィンチが見て微笑む。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加