1章 幼少期〜少年時代

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そんなお祭りの一つ“フラワーフェスティバル”に,先程言った吉田に 「一緒に行かないか?」と誘われたのです。 彼とは小学生の時に一度同じクラスになった事がありましたが、友達と呼ぶには程遠く,その上彼には2歳年上のすごく怖い不良の兄がいて、彼自身もほとんど学校に来ない不良となっていました。 私はその時,何故かその誘いを2つ返事で了承し吉田と2人でフラワーフェスティバルに行ったのです。 市内の平和大通りという大きな道路を,完全通行止めにして歩行者天国となっているお祭りは,パレードや出店で大盛況となっていて,普通に歩くのも困難な状態でした。すると、吉田がある一群を見つけました。 「暴走族だ!」 吉田は私に声をかけると,目の前に大きな旗を振り、群衆を押しのけ闊歩する集団に,私の目は釘付けになりました。 『かっこいいなぁ』 素直な思いでした。暴走族は群れをなし,時折大声で何かを叫んだりしながら世界遺産となっている原爆ドーム近くにある平和公園に向かって歩いて行きました。 気が付くと,私と吉田はその暴走族の後ろをずっとついて歩いていたのです。 私と吉田は,暴走族と一定の距離を保ちながら平和公園に着くと,そこには,その一段より更に何倍もの数の暴走族が大きな円を作り集まっていました。 祭りの事など全く忘れ,私達2人は一時の間,暴走族を眺めていると,彼らは大きな声で自己紹介をしたりしていたように思います。 すると1人のスーツ姿の男とその後ろにジャージ姿の男の2人が,明らかに周りの空気とは違う雰囲気を醸しながら暴走族の円陣に近づいて行きました。 「お疲れ様です!!」「こんにちわ!」 などと言って,さっきまでその空間を我がものにしていた暴走族達は,一瞬にして直立不動となり,その場の空気が変わった事は,若干13歳の私にも容易にわかりました。 スーツ姿の男が煙草をくわえると、後ろのジャージ姿の男がすぐにライターの火をつけました。その光景を見て私はすぐに 『ヤクザだ…』 と思いました。 テレビや映画の世界でしか見たことのなかった私は,この日,本物のヤクザを初めて見たのです。 怖いと思う反面で,あんなに大勢の暴走族が震え上がっているスーツ姿の男の事を “すごい人だ”“かっこいい”などと勘違いをしてしまいました。 この日,祭りで見た光景は,今後の私の人生にとって,大きな影響を与えます。しかも社会的には悪い方向へとです。 その日を境に,私は吉田とつるむようになり,今までの中途半端な非行から,一気にどこからどう見ても一流?のヤンキー少年へとなっていきました。
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