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「高野様、坂本様とのご成婚おめでとうございます!」
「ご成婚おめでとうございます」
結婚が決まって退会の手続きにきた高野に、夢見手と姫崎が並んで祝福をした。
「いやあ、私もまさかこんなに早く運命の相手と結婚できるなんて思っていませんでしたよ。一年以内の成婚率八〇パーセント……あながち嘘じゃなかったんですね」
「もうっ、まだそんなことを言ってるんですか?」
「ははは、夢見手さんには感謝していますよ。私は今まであなたに沢山失礼なことを言った。それでも私のサポートを最後まで続けてくれたのですから」
「そんな……私は何も……」
夢見手は高野の言葉に、今にも泣きそうな顔になった。
手続きが終わって帰り際——
「姫崎さん」高野は姫崎にだけ聞こえるよう耳打ちした。
「彼女と交際してるうちに、私、分かっちゃいましたよ。どの項目が本当で、どの項目が嘘だったのか」
「料理が得意。あれは嘘でしたね。彼女、肉じゃが作れませんでしたもん。でもね、オムライスはすっごく美味しかったんです。それはもうお店が出せるくらいに。それに肉じゃがも今では作れるようになりました。僕の好きな料理を研究してくれたり……彼女本当に優しいんです」
「掃除が得意。あれも嘘でした。少し前からもう一緒に住んでいるんですが、彼女、水回りだけはいつも綺麗にしてるけど、部屋はぐちゃぐちゃ。お互い忙しく働いているので、平日は諦めて休日に一時間だけ二人で集中して片付けるっていうルールにしたんです。案外、二人で分担してやればすぐに綺麗になるものですね」
「お幸せそうで何よりです」
姫崎は微笑みながら高野を見送った。
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