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——八ヶ月後——
「私、退会しようと思います」
「高野様、待ってください。理由を教えていただけませんか」
今日、高野は夢見手から紹介された二人目の女性との交際が破談したという報告に来ていた。
「理由も何も……。もう入会から半年以上が過ぎました。これまでに二人の女性を紹介してもらったわけですけれど、どちらも結婚まで至らなかった」
「それは——」
夢見手は返す言葉もなく俯いた。
「たしかに、あなたが見せてくれたプロフィールは完璧でしたよ。私の希望通りの女性を提案してもらいました。でも、プロフィールは嘘だらけだった。みんな、自分をよく見せようと良いことばかり書いて……」
「まず最初の方、加藤明菜さん。プロフィールを見ると、私の希望とあまりにもマッチしすぎている。最初から思ってましたよ。こんなに自分に何もかも合う人がいるわけないってね。交際を始めて二ヶ月が経った頃、彼女はついに本性を現しました」
「ご存知の通り、私は料理の得意な女性を希望していました。プロフィールには料理が趣味と書いてあったのに、『肉じゃがを作って欲しい』と言ったら彼女はスーパーに行って肉じゃがを買ってきたんです。よくよく聞いてみると、料理が趣味と言っても好きなのはお菓子作りで、肉じゃがなどまともな料理は一度も作ったことがないと言うんです。他にもプロフィールと違うところが次々と出てきました。だから私は彼女と別れました」
「そして今回の、酒井雪絵さん。やっぱり彼女も自分をよく見せようとしてプロフィールに良いことばかりを……まあ、初めから疑いの目で見ていましたけどね、彼女のことも。そんな完璧な女性、いるわけないんですから」
「私は平日は仕事が忙しくて家で過ごせる時間が少ないから、結婚するとなると掃除をしっかりしてくれる人じゃなきゃダメなんです。彼女のプロフィールでは綺麗好きとあった。デートで彼女の部屋に行くと、いつも綺麗にしてあるので、彼女となら結婚してもいいと思った。でも先日、彼女が体調が悪いというから、突然だったけど家まで見舞いに行ったんです。彼女の部屋に上がると、物が散乱していて唖然としました……それが彼女の本性だったんです。やっぱり、思った通り」
「それで今回も、私から別れを切り出しました」
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