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「夢見手さん、あなたは事務室で別作業をお願いしてもいいかしら?」
夢見手がいては高野もバツが悪いだろうと、姫崎は夢見手に席を外させた。
姫崎には、高野の退会が本心ではないことが分かっていた。臆病ゆえに相手を疑い、自ら縁を壊してしまうのが高野だ。でも本気で結婚を望み、自分が信じられる本物の相手を紹介して欲しいと思っているのが高野だ。
高野は姫崎に説得され、もう一度座りなおした。
「それで、特別プランというのは?」
「こちらです」
姫崎は一人の女性のプロフィールを提示した。
「坂本舞さん、ですか。綺麗な方ですね。それに条件も私の望んだ通り。これのどこが特別プランなんですか? 私には今までと何も変わらないマッチングに思われますが」
「実はですね……このプロフィール、嘘っぱちなんです」
「は!?」
高野は姫崎があまりにもおかしなことを言うので面食らった。
「正確に言うと、本当のことと嘘とが混ざっているんです。このプロフィールには十数項目ありますが、そのうちのいくつかを指定して『ここには必ず嘘を書いてください』と言ってあるんです」
「何のためにそんなことを——?」
「それは実際、高野様が坂本様に会われたとき、分かるかもしれませんね」
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