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高野は自宅に戻ってからずっと坂本舞のプロフィールを眺めていた。
坂本舞。二八歳。バレエ教室を運営、兼バレエ講師。
先程の姫崎の言葉を思い出す——本当のことと嘘とが混ざっているんです——
——まさか、名前からして嘘だなんてことはないよな? バレエ講師、これは本当なのか?
坂本舞のプロフィールは高野にとって理想的なことばかりが書いてある。しかし、この中のいくつかは確実に嘘なわけで……
高野は、「ここだけは本当であって欲しい」と思ったり、「ここは嘘でも許そう」などと上から順に一つ一つの項目に対して思いを巡らせていたが、会って、実際に交際してみなければ嘘か本当か分からないことばかりなのだから、今こんな風に考えているのが次第に馬鹿馬鹿しく思えてきた。
項目をチェックすることをやめ、視線をプロフィールの上の方へと戻したところ、顔写真が目に留まった。——これだ!
顔だけは嘘をつけない。会えばすぐにバレてしまうのだから。これだけは絶対に本物だ。信じていい——。
高野は小顔で鼻筋の通った坂本の顔写真を穴が開くほどに見つめた。
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