9人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
飛び込んだその白は、暗黒に成れてしまった目には大変酷で、目が潰れるかと思ってしまうほど眩いものだった。
突如目に飛び込んできた大量の光にようやく慣れてくると、あの真っ暗闇はどこかへと消え去り、辺り一面には白い塊を身にまとった木々が生い茂っていた。——森だ。それに雪も積もっている。
足元を見れば、地面は一面真っ白となっていた。雪の中に裸足が埋まっているも、冷たさは感じない。
空を見上げれば、黒色の空に星々が眩く輝いており、赤と緑とピンクがうまい具合に混ざったカーテンが掛かっていた。
寒くはない。でも口からは白い息が吐きだされた。
いきなり現れた森に驚きつつも、私は後ろを振り返った。どこまでも広がる雪景色の森。地面には2人分の足跡。とてもじゃないけど、あの真っ暗闇の空間があったとは思えない。
「よかった」
前からかけられた声に、私は前を向いた。
白い後頭部で、白い服を着た人が私の手を引っ張っていた。その人は前を向いているから顔はわからない。
「出られたよ」
「……そうだね」
相変わらず後頭部しかわからないそれから安堵の声が聞こえ、素直に相槌を打った。
「それじゃあ……バイバイ」
ようやくこちらへ振り返った後頭部。
赤い目に端正な白い顔。でもその顔に、べったりと赤い液体が顔の半分ほどを塗っていた。
目を細め、口には笑みを浮かべたその人は、手を離して一気にこちらへと近づく。
すると、私の胸には衝撃が走った。口から液体が流れ出てくる。
何が起きたのか理解できない私は、胸元を見た。
——1本のナイフが、刺さっていた。でも痛みは全くと言っていい程ない。夢だからかな。
相手はそんな私をただひたすらニコニコしながら眺めている。
意識を保つ気力が段々と無くなっていき、私はついに瞼を閉じた。
——ああ、これでこんな気味悪い夢から目覚められるのかな。
「本日未明、都内に住む一人の女子学生の死体が住宅で発見されました。警察によりますと死因は失血死との事ですが、体のどこにも外傷が見られず、捜査は難航しているとのこと——」
最初のコメントを投稿しよう!