黒い夢で

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 飛び込んだその白は、暗黒に成れてしまった目には大変酷で、目が潰れるかと思ってしまうほど眩いものだった。  突如目に飛び込んできた大量の光にようやく慣れてくると、あの真っ暗闇はどこかへと消え去り、辺り一面には白い塊を身にまとった木々が生い茂っていた。——森だ。それに雪も積もっている。  足元を見れば、地面は一面真っ白となっていた。雪の中に裸足が埋まっているも、冷たさは感じない。  空を見上げれば、黒色の空に星々が眩く輝いており、赤と緑とピンクがうまい具合に混ざったカーテンが掛かっていた。  寒くはない。でも口からは白い息が吐きだされた。  いきなり現れた森に驚きつつも、私は後ろを振り返った。どこまでも広がる雪景色の森。地面には2人分の足跡。とてもじゃないけど、あの真っ暗闇の空間があったとは思えない。 「よかった」  前からかけられた声に、私は前を向いた。  白い後頭部で、白い服を着た人が私の手を引っ張っていた。その人は前を向いているから顔はわからない。 「出られたよ」 「……そうだね」  相変わらず後頭部しかわからないそれから安堵の声が聞こえ、素直に相槌を打った。 「それじゃあ……バイバイ」  ようやくこちらへ振り返った後頭部。  赤い目に端正な白い顔。でもその顔に、べったりと赤い液体が顔の半分ほどを塗っていた。  目を細め、口には笑みを浮かべたその人は、手を離して一気にこちらへと近づく。  すると、私の胸には衝撃が走った。口から液体が流れ出てくる。  何が起きたのか理解できない私は、胸元を見た。  ——1本のナイフが、刺さっていた。でも痛みは全くと言っていい程ない。夢だからかな。  相手はそんな私をただひたすらニコニコしながら眺めている。  意識を保つ気力が段々と無くなっていき、私はついに瞼を閉じた。  ——ああ、これでこんな気味悪い夢から目覚められるのかな。 「本日未明、都内に住む一人の女子学生の死体が住宅で発見されました。警察によりますと死因は失血死との事ですが、体のどこにも外傷が見られず、捜査は難航しているとのこと——」
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