5人が本棚に入れています
本棚に追加
「自作自演、ってことです……。」
中川に掴まれ首が締まり、苦しそうにしながらも、加藤は興奮し始めていた。
だらんと垂れた腕。
震える足。
口元から涎が零れ、にやにやと歪んだ瞳から、涙が落ちる。
「明石さんが見た女性も、私たちが見た女性も、同一人物。彼女は……、女装をした加藤さんだった。……ストーカーなんて最初から、いなかったんです。そうですよね、加藤さん」
「な、なんだよそれ……。おい! 正樹、ちゃんと説明しろよ!」
中川は、激しく加藤を揺さぶる。
その行動は、余計に加藤を興奮させるばかりだった。
「最初の写真を明石さんに見せられた時点で、あなたは相当焦ったんでしょうね。明石さんそっくりの服装に変えて、明石さんを犯人に仕立て上げようとした。……犯人捜しなんて、するものではないですね。私と綾ちゃんがあなたを尾行したせいで、あなたの思惑にまんまと引っかかってしまった……。」
再び、いやな沈黙が流れてゆく。
中川の手から、ずるりと加藤が落ちる。中川は呆然と、加藤のことを見つめる。
ある日突然、女装をして現れた親友。
その姿で告白をしてきた親友。
彼の、その罪の全て。
最初のコメントを投稿しよう!